種子の冷湿環境での保管について

冷湿環境での保管は、低温湿潤処理(Cold stratify)とも呼ばれます。
温度が低く湿度の高い冷暗環境で種子を保管することで、乾燥して休眠状態にある種子を起こし、発芽率を高める方法になります。
冷湿環境で保管しないと、発芽しない種子もあります。

ここで紹介する方法は、一般家庭で気軽にできる方法を試行したものになり、最も良い方法ではない場合がありますので、あらかじめご了承ください。
1つの方法として参考にしていただければ幸いです。

目次

冷湿環境の準備

キッチンペーパーなどの不織布を水で湿らせ、種子を包みます。※
写真では綿状のキッチンペーパーを使用しています。

※ここではビニール袋に入れるため、便宜上包んでいますが、包まなくても大丈夫です
※包む方法は、水を多く含んでいると、種子が呼吸できなくなる可能性がありますので、注意してください

キッチンペーパーなどの不織布を水で湿らせ、種子を包んだ状態

種子を包んだ(又は乗せた)不織布は、タッパーやビニール袋などで密封します。
種子は呼吸をしていますので、水を入れすぎず、容器内には空気が残るようにしてください。

透明な容器であれば、種子の状態が分かりやすいのでおすすめです。
また、暗い状態を維持することが望ましいため、それらの容器を「光を通しにくいボックス」へ入れるのもおすすめです。

種子をビニール袋で密封した状態
ビニール袋でなく、タッパー等を利用したときの写真

水を湿らせた不織布を敷いて、種子をその上に乗せています。
そして、蓋をして密封します。

冷蔵庫で保管

冷蔵庫で5度前後で保管してください。
凍結は厳禁なので、凍結しやすい場所は避けてください。
また、温度が高いとカビや早期発芽がありますので、注意してください。
密封していれば、通常、不織布が乾燥することはありませんが、もしも乾燥する恐れがある場合には、定期的に湿らせて、常に湿っている状態を維持してください。

補足

チルドルームや野菜室での保管は、避けるのが無難です。
チルドルームは凍結しやすい場所です。
野菜室は高い温度に設定されているので、不向きです。

種まき用土に種子を蒔いてから冷湿保管する方法

他の方法としては、種まき用土(容器)に種子を蒔き、その種子を蒔いた用土(容器)ごと、冷湿環境で保管する方法もあります。
(冷湿環境は、例えば、用土(容器)を十分に湿らせ、ビニール等で包んで冷蔵庫で保管する等が考えられます。)
長期間の冷湿環境での保管が必要な場合や、微細な種子を扱う場合に利用される場合があります。

保管期間が終われば取り出すだけなので、改めて種蒔きする必要はなく、手間が少なくなります。
ただし、菌や苔等が繁殖するリスクが高まりますので、できるだけ無菌の用土の利用する必要があるほか、上記の方法よりも低温維持には注意が必要です。
また、冷蔵庫に土を入れたくない方もいらっしゃると思いますので、おすすめ出来ない場合もあります。

例① 種まき用土(容器)に種子を蒔き、ビニール袋で包んだ状態
例① 冷蔵庫で保管している状態
例② 種まき用土(容器)に種子を蒔き、ビニール袋で包んだ状態
例② 冷蔵庫で保管している状態

種子の取り出し

冷湿環境から取り出した後は、直ぐに種をまきます。
取り出した後に、常温で放っておくと、発芽して不織布に根が絡みついたり、水が腐って発芽率が下がる場合があります。

ポイント

細かい種子の場合には、キッチンペーパーなどの不織布から種子を取るのは骨が折れます。
手でつまむなど、必要以上に圧力を加えることは望ましくありません。
そのため、霧吹きを使い、種まき用土へ種を流れ落とすと、簡単に種まきができます。
発芽してしまい、不織布に根が絡みついている場合は、無理に引き離そうとせず、絡みついている箇所を切り取り、そのまま土へ埋めると良いでしょう。

補足:発芽方法を上げる方法

種子の休眠打破を誘発させるために、「ジベレリン溶液」や「メネデール」に浸ける方法もあります。
冷湿環境での保管でも、発芽率が上がらないときには、種まき前に「ジベレリン溶液」や「メネデール」の希釈液に浸けると良い場合があります。

ポイント

「ジベレリン溶液」や「メネデール」を活用する場合は、希釈液をキッチンペーパーなどの不織布へ湿らせ、種子を包み、1晩から数日ほど冷温環境で保管する良いでしょう。
また、種蒔きの水やり(または腰水)で活用される方もいらっしゃいます。
※種子によって、事情や必要濃度が異なる場合がありますので、取扱いには注意が必要です。

補足

また、種子の表皮が硬いものは、少し傷をつけると発芽率が上がることがあります。
胚は必ず避け、ヤスリなどを使って削ります。
ただし、多くの種子にとっては必要ありません。

補足:カビを防ぐ方法

冷湿環境の温度が少し高い場合や、種蒔きの環境が悪い場合、カビが生えやすい種子の場合など、カビが生えてしまい、発芽しない場合があります。
対処方法としては、「ベンレート」や「カビ取り洗浄液」を薄めた溶液(以下、溶液)を使って、カビを防ぐ方法が考えられます。
※溶液の濃度を誤ると、発芽率を下げてしまう危険性もあるため、注意が必要です。

冷湿環境での保管が長い場合や、カビが生えそうな大きめの種子については、冷湿保管前に溶液に種子を浸したり、溶液を染み込ませたキッチンペーパーなどで種を拭くことが考えられます。

もしも冷湿環境で保管中に、カビが生じたら、カビが生えた種子は隔離し、使用している不織布を交換しましょう。
そして、溶液に種子を浸したり、溶液を染み込ませたキッチンペーパーなどで種を拭く方法が考えられます。

冷湿環境で保管中にカビが生えた場合、種まき後にもカビが生えやすいかもしれません。
種蒔き直前に溶液を使用したり、定期的に溶液を土に注いだりすることが考えられます。

※使用方法については、「ベンレート」や「カビ取り洗浄液」の商品ページを参考にしてください。

補足:種蒔き方法について

一般的な種蒔きの方法について、以下のページにも参考情報を掲載しています。
よろしければ、参考ください。

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