
「アカシア」は「ミモザ」という名前でも知られ、身近な場面で使用されている花木です。
フラワーアレンジメント(花束)にしたり、スワッグ、リース等のインテリア作品作りに利用される方が増えています。
特に、3月8日のミモザの日は定番のイベントになり、多くの花材が流通しています。
ガーデニングでは、庭木・植栽として広く利用されています。
日本各地の庭先でミモザの木が植えられており、ボリュームある花を咲かせています。
花からはエッセンシャルオイルが抽出され、香水や化粧品としても利用される種類もあります。
また、樹皮や種子、樹脂などを食品や薬用成分として活用される種類もあります。
成長が早くて丈夫な種類は、木材、防風林や森林再生の木として植樹されることもあります。
このように幅広い用途で使用されているアカシアですが、実に1,000種類以上あるとされます。
一方、日本で有名な種類は極少数です。
様々なアカシアの中から、「一体どれを選べばよいか」と迷われるケースもあると思います。
当店は、多数のアカシアの種子を扱っており、生花用も栽培しています。
ここでは、当店の取り扱いアカシアの中から、特徴や用途別に、おすすめのアカシアを紹介します。
なお、アカシアの仲間は主にオーストラリアやアフリカ、アジアなどの温暖な地域に生育していますが、ここで紹介する多くは「オーストラリア原産」になります。
(アジアやアフリカのものも一部紹介する場合もあります。)
園芸で有名な種類の大半は「オーストラリア原産」であり、葉の形や色合いも美しく、独特なものが多いのが特徴です。
庭木になるアカシアを選ぶ
日本で地植えするには、「日本特有の長雨に耐えられること」や「寒さに弱すぎないこと」がポイントです。
アカシアの中には、乾燥した土壌や気候を好む種類もあるため、そのような種類は日本の地植えに適していません。
雨に耐える種類を選ぶ必要があります。
また、アカシアの多くは温かい地域を原産とし、寒さに弱い種類も少なくありません。
一方、少しのマイナス気温であれば耐えられる種類も多いです。
※寒冷地では多くの種類の地植えは難しいと考えられます。
1~2年目はマイナス気温に耐えられなくても、その後は、持ち前の生命力で耐えられる種類もあります。
そのような種類が地植えに適しています。
ここでは、上記に加えて、多くの花を咲かせる種類や、葉が美しい・独特である種類などをテーマ別に紹介します。
定番の人気の品種
まずはアカシアとして有名な品種を紹介します。
庭木や鉢植えとして見かけることも多いと思います。
銀葉アカシア
日本で「ミモザ」というと、このアカシアを連想する人も多いのではないでしょうか。
青みのある葉も美しく、庭木として人気があります。
フラワーアレンジメント等でも定番の花材になっています。
成長も早く、大雨にも耐えるので、育てやすい種類です。
観賞用としては小さく育てるのは向いておらず、少なくとも2~3m以上に育てると多くの花が見られます。
パールアカシア
名前の通り、白みを帯びた美しい葉をもつアカシアです。
フラワーアレンジメント等で人気がある花材になっています。
多くの花を見るには2~3m以上に育てるのが望ましいです。
一方で、葉が美しいので、花がなくても立派なディスプレイになります。
カフェやレストランなどの店前ディスプレイとして、1~2m程度のパールアカシアの鉢植えが並べられている様子を見かけます。
丈夫な木でもあり、大雨にも強い印象です。
三角葉アカシア(カルトリフォラミス)
「三角」のギザギザした葉が特徴的なアカシアです。
遠目では、ギザギザとした樹形にも見え、独特の雰囲気になります。
独特の葉だけでなく、花も魅力の一つです。
1~2m程でもボリュームある花が期待できます。
成長も早く、大雨にも耐えるので、育てやすい種類です。
実はアカシアの仲間の中には「三角葉」をもつ種類は他にもあるので、販売店によって別種を指す可能性もあります。
丈夫な種類の一つは本種(アカシア・カルトリフォラミス)と思います。
葉の形や樹形が独特なもの
葉の形・色合い・樹形などが独特なアカシアを紹介します。
銀葉アカシア・プルプレア
大人気の「銀葉アカシア」のパープル葉の種類です。
銀葉アカシアの美しい特徴「青みのある葉」に加えて、新芽の色や秋頃の葉が、美しいパープル色になります。
フラワーアレンジメントやスワッグなどでも人気がある花材になっています。
大分大きくなれば雨も大丈夫ですが、特に若木の頃は大雨・長雨には弱いと考えられます。
そのため、通常の銀葉アカシアに比べると、希少性があります。
銀葉アカシア同様、2~3m以上に育てると多くの花が見られます。
アカシア・プラビッシマ
しなやかに湾曲する枝に、やや丸みを帯びた小さな葉が特徴的です。
このような角葉は「三角葉アカシア」を連想すると思いますが、全く違った様子です。
こちらは小さな葉が枝の周りを覆うように生えていくので、まるで鱗にも見えます。
最初は成長が遅く感じますが、大きめの鉢に植えると、早く成長し始めます。
大きくなれば雨も大丈夫ですが、特に1年目は大雨・長雨に弱いと考えられます。
樹高は高くない方ですが、2m以上で育てるのが望ましいと思います。
アカシア・ステノフィラ
「シューストリング」とも呼ばれ、靴紐のような葉です。
柳のように枝垂れる様子が独特になります。
青みのある長細い葉が美しく、淡い色の花が咲くと写真映えします。
当地では花は1年に2回以上見られ、長く咲いています。
生育地は厳しい環境ということで、日本の大雨にも軽く耐え、寒冷地でなければ、寒さにも強い方と考えられます。
こちらも2m以上で育てるのが望ましいです。
丈夫なもの
ここでは丈夫なものを紹介します。
最初から育てやすく、成長する速度も比較的早い種類です。
アカシア・コグナータ
細い葉をもつアカシアです。
遠目から見ると、サラサラしたような雰囲気です。
大きく育つと葉枝が枝垂れるような樹形になります。
丈夫であり、小さいときから大雨も平気です。
初心者や手間をかけたくない人にも育てやすい種類です。
花はイエロークリーム色の花を咲かせます。
小さめに育てると、花のボリュームは物足りないので、2~3m以上で育てることがおすすめです。
アカシア・ロンギフォリア
「ロンギフォリア」は「長い葉」を意味します。
日本名では「ナガバアカシア」と呼ばれ、小柄な笹状の葉が特徴です。
丈夫な種類であり、成長は早いです。
最初は成長が遅く感じることもありますが、大きめの鉢に植えるとすくすく育ちます。
花を楽しむには、少なくとも2~3m以上で育てることが望ましい種類です。
アカシア・サリグナ
やや大きめの長い笹状の葉をもつアカシアです。
成長が早く、発芽から半年で1m前後になり得ます。
そして、丈夫な種類なので、育てやすいです。
少しのマイナス気温なら全然平気ですが、強い寒気には弱いと思います。
鉢植えで2m前後でも花を咲かせますが、多くの花を見るには、大きめに育てるのが望ましいです。
地植えで3m以上にはしたいところです。
アカシア・スペクタビリス
マメ科特有の羽状の葉を持つアカシアです。
日本でも流通しているので、見かけた方も多いと思います。
各葉には丸みがあるので、優しい印象です。
この種類も、成長が早くて丈夫です。
先に説明したサリグナよりも寒さには耐性がありそうです。
丈夫なものは他にも沢山ありますが、香水や精油として利用されるアカシアも丈夫なものが多い印象です。
主な種類は、後に紹介する「香水や精油として利用されている種類を選ぶ」を御覧ください。
小さめに育てる
これまで紹介してきた種類は、少なくとも2m以上で育てることで魅力がより発揮されると考えられます。
一方で、小さめに育てても、葉や樹形、花を楽しめる種類も沢山あります。
これらの種類は、後述する「鉢植えとして育てる」の「小さく育てられるもの」で紹介します。
もちろん、小さめの庭木として地植えしても育てやすいと考えられます。
鉢植えとして育てる
鉢植えとして育てることに向いているアカシアは、小さくても花を楽しめたり、葉にも特徴がある種類になります。
加えて、アカシアの中には、日本特有の大雨に弱い種類・寒さに弱い種類も少なくないので、苦手な時期に鉢を移動させることができれば、育てられるアカシアの幅が広がります。
寒冷地でも、冬には温かい屋内へアカシアを避難させることも可能です。
乾燥気味を好むアカシアについては、特に日本での流通が少ないと思います。
これらの種類の中にも、葉枝が美しいことや、見た目がオリジナリティあるなど、魅力的な種類がたくさんあります。
小さく育てられるもの
小さく育てられるものは、樹高が低く、丈夫なものを紹介します。
鉢植えだけでなく、地植えでも小さく育てることができるので、幅を取らない庭木としても活用できます。
アカシア・コンフェルタ
別名「ゴールデントップ」とも呼ばれ、ボール状の沢山の黄色い花を咲かせます。
まるでヒノキ系の針葉樹のような、小さな葉が特徴的です。
アカシアの中でも小型であり、大きく育てたとしても数m程度の樹高です。
ある程度成長すると、丸みを帯びた樹形になります。
小さい時は大雨・長雨には注意ですが、比較的、丈夫になります。
アカシア・コベニー
別名「ブルーブッシュ」とも呼ばれ、白みを帯びた美しい葉が特徴的です。
常に一定の人気がある印象です。
美しい葉の方が人気の秘訣かもしれません。
小さい時は大雨・長雨には少し注意ですが、比較的、丈夫になります。
アカシア・デコラ
名前からして、優雅さ・華やかさを感じるアカシアです。
「デコラ」はラテン語の「decorus(優雅)」を意味します。
「ショーウィーワトル(華やかなアカシア)」とも呼ばれます。
大きめに育ててもいいのですが、1m程度の樹高でも、花々が期待できます。
アカシア・ヴェスティータ
別名「「ウィーピング(枝垂れ)・アカシア」とも呼ばれます。
「ヴェスティータ」は、「服を着た」に由来し、小さめのレモン型の葉には葉毛がみられます。
それが光に反射し、白みをおびた色合いも見られます。
成長しても3m程度の樹高であり、小さめに育てられます。
加えて、雨にも強いので、育てやすさもあります。
やや乾燥気味に育てることが望ましいもの
ここでは、日本の大雨・長雨は苦手なものの、おすすめできる種類を紹介します。
水を与える頻度には注意が必要ですが、「難易度が高い熱帯の観葉植物」に比べると、難易度は、ずいぶんと低いと考えられます。
アカシア・デュルモンディ・エレガンス
穂状の花を咲かせる、小型のアカシア(ミモザ)です。
樹高は大きくても1~2mであり、アカシアの中では、とても小型の種類といえます。
小型な分、鉢植えとして適しているアカシアです。
オーストラリア等では、観賞用の花木として用いらます。
最近は日本でも少しだけ流通し始めているようです。
アカシア・イテアフィラ
細長い葉と枝垂れる樹形が特徴的なアカシア(ミモザ)です
青みのある葉は涼しげな印象があります。
オーストラリアの雄大な峡谷として知られるフリンダース山脈に生育し、「フリンダースレンジ・ワトル」とも呼ばれます。
南オーストラリアのアカシアということもあり、やや乾燥気味に育てることが望ましいと考えています。
(今後、アップデートする可能性もあります。)
テーマ性があるもの・独特なものを選ぶ
生育している国や地域では象徴的なものや、名前に興味深い由来があるものなどを紹介していきます。
その国や地域、逸話に思いを馳せながら、育てるというのも趣があります。
アカシア・アネウラ
別名「マルガ (Mulga)」と呼ばれます。
オーストラリア東部の内陸部には「マルガ・ランド」という地域があり、本種が多く生育しています。
ハチの刺し傷で作られるこぶは「マルガ・リンゴ」と呼ばれます。
また、甘い蜜を腹部に貯める「ミツアリ」が地下に巣を作ることが多いようです。
オーストラリア先住民は木材・食用・薬用などに活用し、「マルガ」という名前も「盾」に由来するようです。
日本で育てる場合、乾燥を好む種類であるため、水やりは控えめにして育てることが大切です。
アカシア・コンフューサ
本種は台湾やフィリピンが原産地とされる、アジアの花木です。
「相思樹」とも呼ばれ、中国の春秋時代の恋物語が由来とされています。
原産地の台湾では木材から楽器や家具を作ったり、お茶や漢方薬としても用いられました。
台湾の初夏頃には、相思樹が花を咲かせ、山々を彩ります。
香水や精油として利用されている種類を選ぶ
アカシアの中で、香水や精油、化粧品の原料などに利用されている種類を紹介します。
原料に使用されているアカシアは、成長が早くて丈夫な種類が多い印象があります。
アカシア・デクレンス
本種の花ロウ(フローラルワックス)は化粧品の成分として有名です。
海外ではエッセンシャルオイルとしても販売されています。
更に、木材や化学品、アラビアゴムの代替品として利用されるなど、幅広い場面で活用される花木です。
「アーリー(早い)グリーンワトル」と呼ばれ、寒い時期の終わりに咲くことから、オーストラリア先住民族のダラワル族は、寒くて風の強い時期(Tugarah Gunya’marri)の中で、寒風が収まる春の訪れの花として捉えました。
アカシア・ファルネシアナ
和名では「金合歓(キンゴウカン)」とも呼ばれ、中央アメリカ等に生育しているアカシアです。
スウィート(甘い)アカシアとも呼ばれ、花からは甘い香りがあります。
海外では、花からの精油は「カッシースウィート(Cassie Sweet)」エッセンシャルオイルとして有名です。
ヨーロッパを始めとして、香水として広く利用され、他の化粧品の成分としても利用されているようです。
1~2mの樹高としても育てやすく、1年を通して春と秋の2回、花を咲かせます。
アカシア・メアンシー
淡い黄色の花を咲かせるアカシアです。
花からは精油が抽出され、ミモザオイルの成分は本種の場合もあります。
一般的なミモザに少し遅れ、多くの花を咲かせます。
寒さには弱いはずですが、少しのマイナス気温であれば軽く耐えます。
生命力が高いので、寒さで葉が萎れた様子になっても復活することがあります。
(その分、地植えには注意が必要です。)
※「ブラックワトル」は、この種類を指すこともあれば、別の種類を指す場合もあります。
(参考)成長が早くて丈夫なアカシア
成長が早くて丈夫なアカシアは、以下の記事にもまとめて掲載しています。
まとめ
本記事では、用途別に、様々なアカシアを紹介しました。
魅力あるアカシアは他にもあり、残念ながら紹介できなかっアカシアも沢山あります。
現在育成中のもの・これから販売予定のものもあり、今後、アップデートしていきます。
期待していなかったアカシアの種類からも、知られていない、新たな一面を見つけられることがあります。
花だけでなく、葉の形や色合い、独特の特徴を発見することができます。
また、育成する地域によっては、合う・合わないアカシアもあると思います。
例えば、冬が寒い地域では、その地の冬に耐えられるかは、育ててみないとわからないことが多いと思います。
育ててきた環境や、個体差によっても耐性には違いが生じる可能性があります。
同じ地域でも、寒風が当たりやすい場所を避ければ、寒さに耐えることもあります。
アカシアには多くの種類があるので、様々な種類を育ててみると、地域や場面に合ったユーカリを見つけることができると思います。
