種子を熱湯に浸ける発芽準備の方法 – アカシア等のオージープランツや、硬い種皮を持つ植物

アカシア(ミモザ)を始めとしたオージープランツや、硬い種皮をもつ植物の一部について、発芽には、種まき前に、「熱湯に浸ける」の事前準備が必要です。
「熱湯に浸ける」ことは、通常の種子ではあり得ないことですが、一部の植物では、この準備をしないと、発芽できる種子が極めて少なくなります。

ここでは、発芽準備の方法について紹介します。

目次

該当する種類と、熱湯に浸ける理由

「熱湯に浸ける」という事前準備が必要な種類は、当店で確認している限り、多くのアカシアやネムノキの仲間、バンクシアの仲間、ブラキシトン、一部のユーカリなどがあります。
主にオーストラリア原産のオージープランツが多いと思います。

オージープランツ以外にも、硬い種皮で覆われている種子をもつ植物について、熱湯に浸けることが有効である場合があります。
該当する種類は、熱帯植物が多いように思います。

オージープランツ全体や、硬い種皮の植物全般が該当するわけではないので、誤った種子を熱湯に浸けないように注意ください。

熱湯に浸ける理由

オーストラリアなどの山火事のニュースを耳にしたことはありませんか。

これらの種子は、その山火事を生き延び、火事を「目覚まし」にして、火事の後の荒野から芽を出します。
最初、種子は強い外皮に覆われており、火事の熱によって、その外皮の力を弱め、発芽できる状態になります。
火事を再現することはできませんので(逆に種子を燃やしてしまう可能性もあるので)、「熱湯に浸ける」ことが火事の代替手段になります。
(※全ての種類が、その理由ではない場合もあります)

なお、少し中級者向きですが、熱湯に浸ける以外の方法もあります。
その方法は「熱湯に浸ける方法」の後に紹介します。

熱湯に浸ける方法

熱湯に浸ける方法の手順は以下になります。

①お湯を沸かす

沸かす水は、普通の水道水で問題ありません。
ヤカンやケトルなどを使い、水を沸騰させます。

②熱くなった水に種子を入れる

沸騰した直後の水を別容器に入れて、その容器(熱い水の中)へ種子を入れます。
(※別容器を使わなくても、水を沸騰させたときの容器へ種子を入れても問題ありません。)
沸騰した直後の水に「種子を浸けて大丈夫?」と不安になるかもしれませんが、基本的に大丈夫です。

熱湯を入れた状態
熱湯をたっぷりと注ぎます
③水に入れた状態で放置する

水に入れたら、数時間~1日ほど放置します。
水は冷めてきますが、改めて水を沸かす必要はありません。
冷めた水でも浸し続けることは、種子に水を吸収させる意味があります。

※種子も呼吸をしているため、長期間水に浸けることは望ましくありません。
 水に入れる時間が不明な場合は、種子購入店に確認するか、12時間程度に抑えることが望ましいです。

④種子を取り出す

水に浸けた後、通常は種子は水を吸収して膨らんでいます。
特に、種皮が硬い種子については、明らかに膨らんでいることが確認できると思います。

いくつもの種子は膨らんでいるのに、明らかに膨らんでいない種子があれば、その種子のみ、以下の方法を試してください。
もう一度、熱湯に浸ける
次の章の「熱湯に浸ける以外の方法」を試す

⑤通常通りに種蒔きする

種子を水から取り出し、種まきします。
一般的な種蒔きの方法は、種まきの方法で解説していますので、ご参考ください。

発芽活力液を使用する場合

発芽率を上げる方法として、種子を「メネデール」等の発芽活力液を希釈した水に浸けると、発芽率が上がるケースがあるようです。
この方法を利用する場合は、熱湯が十分に冷めた後、種を取り出して、メネデールを希釈した水に種を入れ、所定時間、放置します。

熱湯に浸ける以外の方法

熱湯に浸ける以外の方法として、主に以下の方法があります。

熱湯に付ける以外の方法
  • 100度近い温度の乾燥器に入れる
  • スモークウォーターに浸す
  • 薄めた木酢液(または竹酢液)に浸す
  • 硫酸に少し浸す
  • 種皮に傷をつける

「100度近い温度になる乾燥器」は通常は利用できず、一般家庭では「硫酸」も危険でハードルが高いと思います。
また、「スモークウォーター」は、新たに購入する必要がありますが、手に入りにくいか、高価です。
スモークウォーターの代用として、「木酢液」がありますが、新たに購入する必要があります。
(「木酢液」は試した限り、効果は高くないように思えます。)

ハードルが低い方法としては、「種皮に傷をつける」の方法が考えられます。
使用する道具は「ヤスリ」または、「ハサミ」か、「カッター」のみです。
更に、「熱湯に浸ける方法」よりも、発芽促進に効果的な場合もあります。
デメリットとしては、一つ一つの種子に傷をつける作業が必要なので、手間がかかります。
特に、多くの種子を種蒔きするときには、とても時間がかかる作業になります。

種皮が薄い種子に関して

種皮が薄い種子(明らかに種皮が硬くない種子)については、「種皮に傷をつける」は有効ではないことが多く、種子自体が破損してしまう可能性がありますので、それ以外の方法をご利用ください。

種子の外皮を傷つける方法

ここでは種子に傷をつける方法について紹介します。

①種子の外皮に傷をつける

「ヤスリ」や「カッター」等を使い、種の外皮を削ります。
外皮全体を削る必要はなく、一部分のみを削り、白い部分が少し見えたら完了です。

なお、削ることが厳禁な場所があります。
それは種子の胚付近です。
植物の元になる重要な部分のため、ここを削ると発芽できなくなります。

(例)
アカシアのような植物の種子は、以下の画像のようなパターンが多いです。
その場合、胚の場所は、赤枠付近なので、赤枠付近を削るのは厳禁です。

②水に浸ける

水に浸け、数時間~1日ほど放置します。
(熱湯にする必要はありません。)
先に紹介した「熱湯に浸ける方法」の「③水に入れた状態で放置する」と同様です。

水に浸けても、種子が膨らんでいなければ、削り足りない可能性がありますので、もう一度削って水に数時間以上浸けます。
(膨らまない理由として、種子が生きておらず、膨らまないケースもあります。)

③種をまく

種子を水から取り出し、種まきします。
一般的な種蒔きの方法は、種まきの方法で解説していますので、ご参考ください。

まとめ

ここでは、発芽前に熱湯に浸ける方法を紹介しました。
少し手間ではありますが、その植物が生育している現地の環境を想像できる工程でもあり、植物を育てる楽しさの一つでもあります。

なお、複数の発芽方法を組み合わせたり、様々な手法を試されている方もいらっしゃいます。
「アカシア 種から育てる」等とGoogleなどで検索すると、とても興味深い記事に巡り合えます。

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