ユーカリは コアラのイメージがありますが、花束やリース、スワッグなどのインテリア素材としても人気の高いグリーン素材です。
葉や枝には芳香成分をもち、エッセンシャルオイルや化粧品でも使われており、香りには癒しを感じる方も多い植物です。
ここでは、ユーカリを種から育てる魅力についてご紹介します。
多様な種類から選ぶことができる
ユーカリは葉の形も色合いも様々
ユーカリは800種類以上あるといわれており、葉の形や色合い、花の色や樹形などの特徴も様々です。
日本で一般的に流通している種類は5~20種類程度で、全体の1~2%程度です。
ユーカリの中には、寒さに弱くて暑さに強いユーカリもあれば、寒さに強いユーカリまであります。
それらの種類の中から、自身や地域に合った種類を選ぶことができます。
苗木での入手は難しいことが多い
流通数(需要)が多いものは値段がお手頃になりますが、流通していないものは高額になりがちです。
園芸店としても、需要が不明なものは、たくさん仕入れにくく、売れるまで毎日管理する手間が生じるため、どうしても扱いにくいのです。
時々、小さなブームになって、様々なユーカリの苗木を見かけることもありますが、直ぐにブームが過ぎて無くなるように思います。
高めの値段で珍しいユーカリを購入できたとしても、育てる環境が合わずに枯らしてしまうことや、値段の割には大した種類ではないことも起こりうります。
種子なら値段も安いので、様々なユーカリを育てることができます。
【様々なユーカリ】
ユーカリ銀世界
フラワーアレンジメントで利用されることが多い人気のユーカリです。
ツキヌキユーカリ
枝が葉を突き抜けているような珍しいユーカリです。
ユーカリ・トルカータ
美しい花を咲かせる小さめのユーカリです。
個性のある苗を育てることができる
市販の苗木は、挿し木苗かもしれない
小売店で販売されている苗は、挿し木苗の場合があり、一見では区別が付かないと思います。
ユーカリは挿し木が難しい種類が比較的多いと思いますが、中には、挿し木が容易な種類もあります。
挿し木苗は、親木の性質を受け継ぐことになります。
それは利点でもある一方、弱い環境も同じということでもあります。
そのため、苦手な環境になると、一斉に枯れてしまう可能性もゼロではありません。
挿し木苗でも通常育てる分には問題ないのですが、実生苗では、挿し木苗では見られない魅力もあります。
実生苗には個性がある
実生苗は、親木とは遺伝子が異なるため、それぞれの苗に個性があります。
ときどき、葉の形などの外見や葉の大きさが少し異なったり、育つスピードが違ったりと、独特性をもつことがあります。
一律のコピー苗ではなく、多少の個性をもつ植物を育てることができるのが、実生の魅力です。
特にユーカリは、他の植物と比較しても、個性が現れやすい植物ではないか、と感じています。
「育つスピード」は、実用的にも関係します。
十数以上の多くの苗を実生すると、明らかに育つのが早い苗や、明らかに遅い苗が出てきます。
「育つスピードが早い苗」は、例えば、葉枝を沢山収穫したい方にとって有用です。
成長が早く、育てる環境に馴染みやすい苗を選別して大きく育てることができます。
「育つスピードが遅い苗」は、例えば、場所のスペースを取らず、植え替え等の手間も減らしたい人にとっては有用です。
マンションのベランダ等で鉢植えにしたり、コンパクトな庭木として育てることに向いています。
複数の実生苗を育てることで、自身に合った実生苗を選んで育てることができます。
独自の苗木を求める方も
当店の種子購入のお客様の中には、「特異性のある姿形や性質をもつ、独自の植物にならないか」を期待して、多くの種子を購入されて育成されている方もいらっしゃます。
もしも、新しい種類として認められれば、希少な品種として登録できるかもしれません。
例えば、十字対生(左右に2枚ずつ葉が付いて、正面から見ると十字に見える)の植物において、三輪生(3枚ずつ葉が付くこと)の苗が時折、現れることがあります。
確率は植物によって異なると思いますが、1%以下と思います。
他にも、葉の様子など、外見に明らかな違いが見られることがあります。
写真はユーカリ・マカルトゥの三輪生です。
2本の芽が写っていますが、下部の芽が通常であり、上部が他とは違う三輪生になっています。
1~2年で立派になる
種子から育てると、立派になるまでに何年もかかるように思いますが、ユーカリは育つのが速い種類が多いのが魅力です。
種子から育てても、1年ほどで0.5~1m近くに成長するユーカリが少なくありません。
気候等の条件があれば、数年で花が見られることもあります。
すくすくと育っていく姿を見るのは楽しいものです。
ユーカリ・グロブルス
エッセンシャルオイルとして有名で蜂蜜用の花としても使われます。
育つのが早く、すくすく育ちます。
ユーカリ・ロブスタ
コアラの木やお茶として有名なユーカリです。
3年で見事に花を咲かせました。
ユーカリ・アップルボックス
アップル型またはハート型の葉のユーカリです。
数十cmだったものが地植えすると1年で2mを超えてしまいました。
早く育つユーカリは、以下のページにも参考情報を掲載しております。
育成する環境に合わせて選べる
ユーカリの多くの種類はオーストラリアを原産とします。
オーストラリアは、国土の多くを国土の多くを熱帯や砂漠地帯が占めており、そこで育つユーカリは暑さに強く、日本の暑さでも耐えることができる種類がほとんどです。
「ユーカリは寒さに弱いのでは?」と思われるかもしれません。
確かに寒さに弱い種類もありますが、日本の寒さに耐えることができるユーカリも多いです。
オーストラリアの高山や砂漠の極寒にも耐えるユーカリもあります。
日本でも山村の農園で栽培されているほか、時折、公園や路地に植えられたユーカリが大きく成長するのを見かけることができます。
注意点としては、暑さ・寒さだけでなく、湿度を考慮する必要がある点です。
日本の夏や冬の温度に耐えられるユーカリの種類がある一方で、夏の多湿を苦手とするユーカリは少なくないとうことです。
大まかには、オーストラリアの西側を生育地とするユーカリは、難易度が高い種類が多い傾向です。
逆に、夏に多湿になりにくい地域では、育てやすい種類になる可能性があり、他との差別化ができるかもしれません。
日本の様々な気候に対して、それれぞれに順応する素質をもつユーカリがあります。
種子や幼い苗から育てることで、育つ環境に順応させながら育てることができるかもしれません。
特に、親木のコピー苗であれば、ある条件で、一斉に枯れてしまうことが起こりやすくなります。
種子から育てた苗であれば、個性があるため、苦手な条件でも全滅にはならない可能性があります。
ユーカリ・スノーガム
オーストラリアのアルプスに生育し、寒さに強いユーカリです。
ユーカリ銀丸葉
銀色を帯びた青緑色の葉をもつユーカリであり、比較的寒さにも強い種類です。
ユーカリ・グラウケスケンス
木肌が滑らかな白褐色やネイビーグリーンのユーカリで、英国等にも植樹されています。
寒さに強いユーカリは、以下のページにも参考情報を掲載しております。
豊かなハーブの香りをもつ
ユーカリの魅力として、葉枝に爽やかな香りをもつことが挙げられます。
精油は香水や化粧品、薬用、アロマ用、生活用品などに使われています。
ユーカリは種類によって香りは異なり、シネオール系の清涼感のある香りから、柑橘系の香り、森林系のウッディな香り、ペパーミントに近い香りなど、様々です。
育つのが速いユーカリも多いので、定期的に枝葉を収穫して、ハーブとして活用することができます。
ただし、リバーレッドやレインボーユーカリなど、香りが少ない種類もありますので注意が必要です。
ユーカリ・ニテンス
別名、シャイニング・ガム(輝くユーカリ)です。
育つのが早く、甘い香りをもつのが特徴です。
ユーカリベイビーブルー
銀世界の園芸種であり、小さく丸い葉をもつユーカリです。
育つのが比較的早く、香りも豊かです。
ユーカリ・ラディアータ
優しく清涼感のあるエッセンシャルオイルで有名なユーカリです。
葉枝や姿形の変化を楽しめる
ユーカリを種子や幼い苗から育てる魅力として、成長度合いによって、葉の形の変化や、葉枝・樹皮の色合いの変化を知ることができる点があります。
ユーカリは、「発芽したてのとき」、「小さな苗のとき」、「背丈ほどに育ったとき(中ぐらいに仕立てるとき)」、「大きく育ったとき」で、全く違う様子になる種類が多いと思います。
葉の形も変化していくことがあるので、どの種類かを判別するのは、ほぼ不可能と思える程です。
このような様々な変化を見られることは、小さいときから育てる醍醐味といえます。
葉が変化していく様子が見られる
ユーカリは、幼木から成長するにつれ、葉の構造を変化させていきます。
厳しい環境に順応し、光の吸収や水分損失の程度を効率的にしてきた結果と考えられています。
幼い苗の様子
幼い苗の様子からは、成長した外見をイメージできないことが多いでしょう。
色合いも違うことがあります。
例えば、朱色の葉が、数ヶ月経つと、銀色帯びた緑色になっているなど、驚きがあります。
また、いくつかのユーカリを育てていると、外見が異なる別種類でも、幼い苗の様子が類似していることがあります。
類似したものは、先祖が近いのかもしれません。
幼い苗の様子が類似していると、育て方の注意点が見えてくることがあります。
数カ月後の様子
数ヶ月程、成長してくると、成長した外見をイメージできることがあります。
一方、この時点では、「違う種類ではないか」と疑う種類も少なくないでしょう。
急に成長速度が上がることもあるので、様々な驚きがあるでしょう。
更に大きくなったときの様子
更に育て、樹高が高くなると、葉は「長葉」へと変化していく種類があります。
葉の見た目に加えて、葉の伸ばし方も変化していきます。
種類にもよりますが、数m以上の背丈になると変化していくことが多いでしょう。
なので、通常育てる範囲では、気にならないこともあります。
また、長葉になっても、低い位置からは元の葉の形である種類も多いので、長葉にしたくない方にとっては、小さく仕立てることで長葉を防ぐ方法があります。
ユーカリ・グロボルス
グロボルスは長葉というイメージの方が多いのでは無いでしょうか。
写真に写っているのは、同じ苗のグロボルスです。
低い位置からの葉の形と、上の方の葉の形が全く異なることが確認できます。
葉の色合いも変化していく
ユーカリは、成長度合いや日光の辺り具合などによって、色合いが変わるようです。
例えば、銀色の帯びた葉のユーカリについて、直射日光に当たる時間帯が長い場所の株は緑色が濃くて、直射日光は一定の時間帯のみに当たる場所に置いている株は銀色が濃いことがありました。
また、鉢の窮屈さ(育ちにくさ)によって、独特の色合いになることがありました。
窮屈さで、紅葉の色合いも違います。
個体差による違いもあります。
日光の当たり具合や、鉢の窮屈さ(育ちにくさ)など、いろいろと試してみると、葉の色合いの変化が見られるでしょう。
樹皮も特徴的になっていく
樹皮の見た目や色合いに特徴があることが挙げられます。
美しい紅色、白褐色や赤褐色の樹皮など、種類によって色合いも様々です。
年代とともに、多様な色合いが混じり、独特な風合いへ変化していくのは育てていく楽しみの一つです。
樹皮の様子から、レッドアイアンバーグ(赤の鉄の樹皮)と名付けられたユーカリや、「ミニリッチ」とも呼ばれる樹皮をもち、フロークが剥がれて巻き毛のコートのようなユーカリ等もあります。
レモンユーカリ
レモン風の香りが有名ですが、樹皮も美しいです。
ユーカリ・リバーレッド
コアラが食べられる木として有名ですが、美しい紅い色合いの若枝/葉とです。
レインボーユーカリ
多くの年数を経て様々な色合いの樹皮になります。
インテリアとしても使える
ユーカリの魅力として、美しい葉枝をもつことが挙げられます。
フラワーアレンジメントやインテリア装飾としても人気です。
育てて収穫した葉枝を花瓶へ活けるだけでも十分立派なインテリアになります。
また、ドライ素材にもなるので、リースやスワッグなどの作品作りで活用することもできます。
一方で、メジャーな種類以外のユーカリは流通していることが少ないため、そのユーカリを入手するには、種子から育てることが一つの方法です。
ユーカリの様々な使い方は、以下に参考情報を掲載しております。
誰でも種まきできる?
特別な器具や技能は必要なく、丈夫な種類も多いので、比較的簡単です。
もし種まきの説明書があれば、その通り進めれば大丈夫です。
「誰でもできる」と言いたいところですが、これまで様々なお問い合わせを受ける中で、以下のケースではハードルを感じられることがあるようです。
・これまでガーデニングや種まきをしたことがない方
・土の種類(例:赤玉土や鹿沼土など)を知らない方
・観葉植物以外の花木を育てたことがない方 など
以上の方は種子ではなく、まずは、苗木(鉢植え)を購入することがおすすめです。
種まきしたことのある方でも、野菜や草花のみの経験であれば、要領が大分違うことがあります。
広く流通している草花や野菜の多くは、品種改良等により、極めて丈夫な品種であるほか、種子が薬剤コーティング等されています。
そのため、それと同じ要領では、他の植物の発芽から育成は難しいことがあるからです。
そのような方や、不安を感じられる方は、まずは、「丈夫で育てやすいユーカリ」の種類の種子を選ぶことが考えられます。
丈夫で育てやすい種類は、比較的、注意点が少ないので、ユーカリ育成を始めることにおすすめです。
(※丈夫で育てやすくても、発芽後の環境変化には弱いケースもありますので、注意して育てることが必要です。)
いつ種まきすればいい?
室内管理であれば、様々な時期での種まきが可能です。
なお、室内では自然光が入る明るい場所での管理が必要です。
1~4月頃に種まきするときは、植物ヒーターの利用が必要になりますが、早めに発芽させれば、春・夏・秋と、十分に成長させることができます。
5~6月頃に種まきするときは、気温は適した時期になることが多く、初夏や秋に成長させることができます。
一方、梅雨や夏本場に入ったとき、まだ幼い状態であれば、涼しい場所での管理が望ましいです。
7~8月頃に種まきするときは、クーラー等を1日中効かせた涼しい場所での管理が必要になります。
秋に少し成長してから、冬に臨むことができるので、冬は室内であればヒーター無しに管理できる可能性が高いです。
9~10月頃に種まきするときは、残暑には注意すれば、種まきに適した温度になることがあります。
ただ、少しずつ気温が下がる時期なので、多くの発芽日数を要するものは適していません。
冬までに、ある程度成長すれば、ヒーター無しに管理できる可能性があります。
11~12月頃に種まきするときは、植物ヒーターの利用が必要になるでしょう。
冬の間は成長しにくいので、1~4月に入ってから種まきしても良いと思います。
小さな種から育てる楽しさ
本記事では、ユーカリの魅力について紹介しました。
ユーカリには様々な魅力があり、ここでは紹介しきれない魅力もたくさんあります。
とても微細な種が発芽し、1~2年で立派な若木へ育っていく様は、育てる充実感があります。
丈夫な種類がありますので、土質や温度湿度を気にせず、気軽に育てることができます。
ただし、中にはとても繊細な種類もありますので、初心者は丈夫な種類を選ぶのがおすすめです。
参考:ユーカリの選び方
ユーカリの選び方の参考は、以下にも参考情報を掲載しております。