
アカシア(ミモザ)とは、春頃にボリュームのある花を咲かせ、花束やスワッグ等のインテリア用として、世界中で大人気の花木です。
花を咲かせる時期は、種類・環境によって春以外のときや、二度咲きのこともあります。
アカシアの種類はなんと1,000種類以上あり、オーストラリア原産の種類が多いことから「オージープランツ」としても有名になりました。
黄色い花を咲かせるアカシアの仲間を「ミモザ」と呼ぶことも多いのですが、アカシア全体を「ミモザ」と呼ぶ人もいます。
アカシアは「花」が大きな魅力の一つですが、「葉枝」が美しい色合い・独特の見た目になる種類もあり、花無しでも、フラワーアレンジメントやインテリア作品の素材として人気があります。
私たちは、農園でアカシアを育てて生花出荷しているほか、様々な種類のアカシアを種子から育てています。
ここでは、種子から育てる魅力についてご紹介します。
アカシアとは
アカシアとはマメ科の花木であり、多くはオーストラリアを原産とし、アフリカや南米などにも生育しています。1
オーストラリアの面積は世界6位・日本の20倍であり、広大な面積です。
そのオーストラリアの森林の10%近くは、アカシアの仲間が生育しているとされます。2
アカシアには様々な種類があり、高原・熱帯雨林・森林・海岸・砂漠など、様々な場所でたくましく生育しており、中には乾燥や塩害にも耐える丈夫な種類が数多くあります。
アカシアは人間の生活にとっても身近な存在になりました。
古くは、オーストラリアやアフリカの原住民が種子などを食用や薬用としても使用したほか、木材を道具や楽器として利用してきました。
現在では、フラワーアレンジメントやリース・スワッグなどで人気があります。
美しい外見に加えて、大きくなっても樹高は数m~十数mと管理しやすいサイズの種類が多いため、庭園や庭木としても植えられています。
丈夫で成長速度が速い種類は、木材や製紙用として栽培されることがあり、様々な国に植樹されるきっかけにもなりました。
森林の再生に使われているアカシアもあり、マメ科植物の土壌の窒素濃度を高める能力で、荒廃した土壌を改善します。

様々な種類から選ぶことができる
花や葉の個性は様々
アカシアは1000種類以上あり、花の色や、葉の形も様々です。
黄色い花を咲かせる種類が多いようですが、白い花を咲かせる種類もあります。
春頃に花を咲かせる種類もあれば、秋頃に花を咲かせる種類もあります。
葉の形と色合いも魅力の一つです。
有名な銀葉アカシアの葉の形から、厚みのある卵型の葉、涼しげな細葉、しだれる葉、トゲになった葉など、様々な特徴があります。
美しい葉枝は、生花(切枝)として、花束やフラワーアレンジメントの素材として使われています。
種子でしか入手できない種類が多い
珍しい種類でも、外見が美しいものや、早く花が見られるものなど、ガーデニング・庭木として優れているものがあります。
アカシアは種類によって花の時期が少しずつ異なりますので、複数のアカシアを植えることで、春の間ずっと花を見ることもできます。
一方、日本の庭や店先で見かける種類は限られています。
これは、銀葉アカシアなどの有名な複数種類は多く販売されている一方、それ以外の種類は少ないことが理由でしょう。
園芸店や生産者としても、需要が不明なものは、たくさん仕入れにくく、売れるまで毎日管理する手間が生じるため、どうしても扱いにくいのです。
流通数(需要)が多いものは値段がお手頃になりますが、どうても、流通していないものは高額になることの理由の一つです。
高めの値段で珍しい種類を購入・仕入れたとしても、環境が合わずに萎れることや、値段の割に大した種類でないことも起こりうります。
種子なら値段も安いので、様々なアカシアを試すこともできます。
有名な代表的なミモザ
銀葉アカシア
代表的なミモザです。
春の時期、特にミモザの日の付近には、花束、リース・スワッグとしても大人気です。
昔は「ミモザ」の代表種は別種類でしたが、最近は本種が人気なので、本種のことを「ミモザ」と呼ぶ人も増えたようです。
銀葉アカシア・プルプレア
新芽や、秋にかけて葉が美しいパープル色になる銀葉アカシアの亜種です。
根付けば丈夫になる印象ですが、銀葉アカシアの丈夫さに比べると弱いため、通常の銀葉アカシアの要領で育てると育たないこともあります。
人気があるので苗木も流通していますが、銀葉アカシア程の丈夫さがないからか、見かけないこともあります。
パールアカシア
パール色のような銀色が混じった葉枝をもち、庭木や店のディスプレイとして人気があります。
花以外のシーズンでも、花束の素材として利用されます。
苗木も流通していますが、人気があるからか、意外と見かけないこともあります。
個性のある苗を育てることができる
小売店で販売されている苗は、挿し木苗の場合があり、一見では区別が付かないです。
挿し木苗は、親木の性質を受け継ぐことになります。
挿し木苗でも通常育てる分には問題ないのですが、挿し木苗では見られない実生苗ならではの魅力があります。
実生苗は、親木とは遺伝子が異なるため、それぞれの苗に個性があります。
同じ時期に育てた苗でも、個性があることで、全く同じの成長速度・伸び方にはならないと思います。
中には、葉の形などの外見が異なることもあります。
一律のコピー苗ではなく、多少の個性をもつ植物を育てることができるのが、実生の魅力です。
当店の種子購入のお客様の中には、中から「特異性のある姿形や性質をもつ、独自の植物にならないか」を期待して、多くの種子を購入されて育成されている方もいらっしゃます。
もしも、新しい種類として認められれば、希少な品種として登録できるかもしれません。
様々な植物の中で、アカシアは種からの発芽が簡単な植物です。
アカシアの多くの種類の種子は熱湯に浸けた後、種をまくと1~2週間で発芽します。

種から育てた人だけにしか知らない、葉の変化が魅力的
アカシアは種子から育てたことのない人しか知らない、葉の変化があります。
多くのアカシアの種子は、発芽当初はマメ科特有の羽状の葉の形をしています。
それが、数週間後に突然、大きさも形も全く異なる葉が出てくる種類もあります。
これは、驚きを与えてくれます。
そして、育つ中や季節の中で、葉の色合いも変わっていきます。
育てる中で、様々な新しい顔を見せてくれるのは大きな魅力の一つです。

1~2年で立派になる
種から育てると育つまでに何年もかかるように思いますが、育つのが速い種類が多いのも魅力の一つです。
種子から育てても、1年ほどで0.5m~1mに成長するアカシアも少なくありません。
最初は成長が遅く感じていても、春に植え替えると、樹高30cm程度のものが、すくすくと育ち始め、2mを超えていくこともあります。
条件が合えば、数年で花が見られる種類もあります。
すくすくと育っていく姿を見るのは楽しいものです。
アカシア・プラビッシマ
手前の2鉢が「アカシア・プラビッシマ」です。
植え替えたときは30cm前後でしたが、5ヶ月で2m近くになりました。
後ろの4鉢も同時期に植え替えた「別種類のアカシア」ですが、本種の成長加速度がわかります。


育成する環境に合わせて選べる
アカシアは比較的暑さに強く、日本の暑さでも耐えることができる種類が多いです。
一方で、寒さに弱いアカシアは少なくありませんので、寒い時期には室内の日の当たる場所で管理することが望ましい場合があります。
-5度程度であれば、寒さに耐えることができるアカシアもあります。
アカシア・シューストリング
青みのある、とても細長い葉をもち、枝垂れるアカシア。
育つのが早く、1年で1m程度になります。
アカシア・キンゴウカン(金合歓)
スウィート・アカシアとも呼ばれ、甘い香りの花を咲かせます。
寒いのは少し苦手ですが、丈夫で育つのが早いです。
誰でも種まきできる?
特別な器具や技能は必要なく、丈夫な種類も多いので、比較的簡単です。
もし種まきの説明書があれば、その通り進めれば大丈夫です。
「誰でもできる」と言いたいところですが、これまで様々なお問い合わせを受ける中で、以下のケースではハードルを感じられることがあるようです。
・これまでガーデニングや種まきをしたことがない方
・土の種類(例:赤玉土や鹿沼土など)を知らない方
・観葉植物以外の花木を育てたことがない方 など
以上の方は種子ではなく、まずは、苗木(鉢植え)を購入することがおすすめです。
種まきしたことのある方でも、野菜や草花のみの経験であれば、要領が大分違うことがあります。
広く流通している草花や野菜の多くは、品種改良等により、極めて丈夫な品種であるほか、種子が薬剤コーティング等されています。
そのため、それと同じ要領では、他の植物の発芽から育成は難しいことがあるからです。
そのような方や、不安を感じられる方は、まずは、「丈夫で育てやすいアカシア」の種類の種子を選ぶことが考えられます。
発芽は簡単である種類が多いものの、育成には、注意点(水やり頻度や肥料種類など)がある種類もあります。
その点、丈夫で育てやすい種類は、注意点が少ないので、アカシア育成を始めることにおすすめです。

いつ種まきすればいい?
室内管理であれば、様々な時期での種まきが可能です。
それぞれの時期に応じたメリットと注意点があります。
1~4月頃

- 【メリット】
-
- これからの1年間、最大限に成長させることができます。
若木は気温が穏やかな時期に成長しやすく、春時点で少し育っていれば、春にも成長しやすいです。 - 7月頃からの梅雨や夏は、多くの幼い苗にとって苦手な季節ですが、それまでにある程度育つことができます。
- これからの1年間、最大限に成長させることができます。
- 【注意点】
-
- 発芽・育成には植物ヒーター等の器具が必要です。
- 幼い苗は大きな環境変化が苦手なため、春前後の寒暖差がある時期には、室内の気温が安定する環境での管理が望ましいです。
5~6月頃

- 【メリット】
-
- 発芽に適した時期なので、暖房器具無しで発芽・育成しやすいです。
- これからの季節には十分成長させることができます。
- 【注意点】
-
- 地域によっては5月前半は寒いため、発芽には植物ヒーター等が必要になることがあります。
- 幼い苗は、大雨や環境変化が苦手なため、梅雨や夏本場に入ったとき、まだ幼い状態であれば、涼しい室内での管理が望ましいです。
7~8月頃

- 【メリット】
-
- 秋に少し成長して、冬に臨むことができるので、冬は室内であれば暖房無しに管理できることがあります。
- 【注意点】
-
- 通常の植物を暑い時期に種まきすると、発芽不良になりやすく、発芽しても育成の難易度が高いです。(夏が涼しい地域であれば問題ありません。)
通常の植物をあえて本時期に種まきするときは、室内で常時、クーラーの効いた環境にて気温が上がらないように十分な管理が必要です。 - 幼い苗は、環境変化が苦手なため、晩夏に突然に寒くなる場合や10~11月頃に訪れる寒暖差では、気温が安定した室内での管理が望ましいです。
- 通常の植物を暑い時期に種まきすると、発芽不良になりやすく、発芽しても育成の難易度が高いです。(夏が涼しい地域であれば問題ありません。)
9~10月頃

- 【メリット】
-
- 発芽に適した気温であれば、クーラーや暖房器具無しに、発芽・育成できます。
- 秋に少し成長できれば、冬は室内であれば暖房無しに管理できることがあります。
アカシアは丈夫な種類も多いので、冬前半も成長が続くこともあります。(寒冷地を除く)
- 【注意点】
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- 暑い時期が続く場合は、クーラーの効いた環境での管理が必要になります。
- 幼い苗は大きな環境変化が苦手なため、晩夏に突然に寒くなる場合や、10~11月頃に訪れる寒暖差では、室内の気温が安定する環境での管理が望ましいです。
11~12月頃

- 【メリット】
-
- 次の1年間、最大限成長させることができます。
- 7月頃からの梅雨や夏は、多くの幼い苗にとって苦手な季節ですが、それまでに、ある程度成長できます。
- 【注意点】
-
- 発芽・育成には植物ヒーター等の器具が必要です。
- 冬の間は成長が進みにくいので、この時期でなく、少し待って、1~4月頃に種まきすることも一つです。
冬の間に温かい環境で管理できる場合には適度に育ちます。
小さな種から育てる楽しさ
本記事では、アカシアの魅力について紹介しました。
様々な魅力があり、ここでは紹介しきれない魅力もたくさんあります。
小さな種から年月をかけて育っていく様を見るのは、苗から育てるのとは異なる充実感があります。
比較的発芽しやすく、魅力のあるアカシア。
是非、種から育ててみませんか。

- Royal Botanic Gardens, Acacia, https://powo.science.kew.org/taxon/urn:lsid:ipni.org:names:325783-2#synonyms ↩︎
- Australian Department of Agriculture, Australian forest profiles Acacia, https://www.agriculture.gov.au/sites/default/files/abares/forestsaustralia/publishingimages/forest%20profiles%202019/acacia/AusForProf_2019_Acacia_v1.0.0.pdf ↩︎