花木の種まきガイド – 種蒔きから植え替え編

樹木や花木の種まき方法や発芽促進の方法をご紹介します。
本ページは準備編からの続きになり、種子の事前処理や種まき方法を紹介します。

ここで紹介する方法は、一般家庭で気軽にできる方法を試行したものになり、最も良い方法ではない場合がありますので、あらかじめご了承ください。
1つの方法として参考にしていただければ幸いです。

目次

1. 種まき直前の処理

水に浸ける場合

種まき直前に6~24時間ほど水に浸けることで、乾いた種子に水を吸収させる方法があります。
注意点は、水に浸けすぎるのはよくないということです。
種子も呼吸していますので、水に浸けすぎると発芽不良を起こします。
水に浸ける時間が不明な場合には、24時間以上も浸けるのは良くないので、12時間以内に抑えた方がよいでしょう。

ただし、周りに比べて明らかに水吸収していない種子があれば、それらの種子のみ長く浸けて大丈夫です。

微細な種子の場合には、通常、水に浸ける必要はありません。

補足

水に浸ける際、メネデール等の発芽活力液の希釈液に浸けると、発芽率を上げられるケースがあるようです。
メネデールは肥料ではないので、発芽を阻害することはないと考えられますので、不安があれば活用してみるのも手です。

熱湯に浸ける場合や種皮に傷をつける場合

アカシア等の一部の種子は、熱湯に浸けないと発芽しにくい場合があります。
熱湯の代わりには、やすりなどで種子に傷をつける方法もあります。
傷を付ける方法は、種皮の厚い種子には効果的です。
種子を傷つける場合には、胚(芽や根のもとになる場所)は絶対に傷つけないようにしてください。
以下のページにも参考情報を掲載しています。

冷湿保管する場合

寒い環境がトリガーになる種子や、長い間保管されている種子などは、「温度が低く湿度の高い冷暗環境」で種子を保管することで、乾燥して休眠状態にある種子を起こし、発芽率を高める方法があります。
冷湿環境での保管は必要としない種子もありますが、ユーカリや針葉樹などの樹木の種子にとっては効果的です。
必要かどうか不明な場合には、販売元へ確認するとよいでしょう。
以下のページにも参考情報を掲載しています。

カビが生えやすい種子や、発芽までに数か月以上を要する中大型種子の場合

種子によっては、カビが生えてしまい、発芽しない場合があります。
カビ対策をすることでカビを防ぎ、発芽率を上げられるケースがあります。
観葉植物やヤシ、大きめの種子はカビ対策をすることが望ましいと考えます。
カビ対策は、あらかじめベンレートやカビ取り洗浄液を薄めた溶液に種子を浸したり、溶液を染み込ませたキッチンペーパーなどで種を拭く方法があります。
種まき後には、定期的に溶液の水をかけることが考えられます。
(使用方法は、ベンレートやカビ取り洗浄液の商品ページをご覧ください。)

2. 種まき

あらかじめ、種まき容器の用土を湿らせます。
種まき用土の深さは、一般的には3~5cm程度にします。
深くて水が滞留しやすいと、水の循環も悪くなり、根腐れを起こす可能性があります。

その上に種を蒔いていきます。
細かい種子の場合は、蒔きずらいので、半分に折った紙などへ乗せ、蒔いていくと楽です。

ポイント

種まき前に水に浸けている場合には、一度キッチンペーパーなどの不織布でこし取ります。
ただし、細かい種子の場合には不織布から種子を取るのは骨が折れます。
手でつまむなど、必要以上に圧力を加えることは望ましくありません。
そのため、ジョウロや霧吹きを使い、種まき用土へ種を流れ落とすと、簡単に種まきができます。

3. 覆土

覆土の量は、種子の大きさによって異なりますが、種子の大きさの1~2倍が目安です。

微細な種子の場合には、覆土は軽くで大丈夫です。

覆土が厚いと、酸素が不足して発芽不良を起こします。

注意点

覆土の必要性がない種類もありますので、植物の種類に応じて確認ください。
特に、好光性種子(発芽に光が必要な種子)の場合、覆土は発芽を阻害します。

4. 水やりと置き場所

水やり

種まき後の環境では、多湿状態を維持する必要があります。
水を切らすことは厳禁ですので、土が水分を保つ状態を必ず維持しましょう。

水やりは腰水からの水やりが一般的(安全)です。
腰水の方法は、種まき容器の1/3程度の高さがある受け皿に水を入れて水分を吸わせます。

一方で、腰水の水やりは手間がかかるのがデメリットです。
上から水やりする場合は、やさしい水流で水やりします。
または霧吹きを使って水をあげましょう。

写真のような水やりは、水流が強すぎるので、おすすめできません
ポイント

特に小さな種子の場合には、ジョウロなどで水をかけると種が奥に入ってしまう可能性がありますので、丁寧に水をやることが大事です。

ポイント

カビが生えやすい種子の場合には、ベンレート等の殺菌剤を薄めた液体を定期的にスプレーすることが望ましいです。

多湿状態の維持

最初に水を供給したあとに、光を通す覆いをして、水分を外に逃がさず、多湿を維持する方法もあります。
その手段として、種まき容器の上にサランラップやプラスチックカップをかぶせる方法もあります。
小さめのビニールハウスも安価に販売されており、活用するのもおすすめです。

注意点

発芽後の苗が小さいときは、環境変化に弱いため、発芽した後には直ぐに外さず(別の場所へ移さず)、少しずつ外気へ適応させていきます。

置き場所

種まき容器の置き場所は、強い直射日光が当たらず、雨風を受けない多湿環境で管理します。
一部の植物を除き、とても暑い場所は避けてください。
芽が出ても暑さに負けてしまうことがあります。

また、発芽した直後および数か月以内には、ナメクジや青虫などの害虫によって、芽が食べられてしまう危険性があります。
私たちも、何度も経験しており、油断したときに、あっという間に食べられてしまったことがあります。
特に屋外の場合は、よくある問題のため、害虫が侵入しないように注意してください。

発芽した後にも、苗が小さいときには、温度・湿度などの急な環境変化は好ましくありません。
置き場所を変更するときは注意してください。

例えば、発芽までにビニールなどを被せており、発芽したので、ビニールを取り外すと、数日経過後、萎れてしまうということがあります。
これは湿度の急激な変化によるものです。
また、高い湿度の場所では、茎が弱くなりやすく、茎が切れてしまうことがあります。

環境を変化させる場合は、少しずつ慣らしていくようにします。

5. 植え替え

植え替え

発芽後、数週間以上の様子を見て、本葉が4枚以上あって、丈夫そうであれば、植え替えを行います。
植え替えは枯らしてしまう危険が多い場面ですので、植え替えをせず、元の用土へ薄めの液体肥料をかけて、可能な範囲で大きく育てる方法もあります。

置き場所の注意点

苗が小さいときには、温度・湿度などの急な環境変化は望ましくありません。
植え替えをした直後に、置き場所を大きく変更すると、枯らせてしまう危険性が高まりますので、注意してください。

害虫には要注意

植物が幼いときには、ナメクジや青虫などによって、葉が食べられることで、葉が無くなって枯れることがあります。
葉を食べる害虫にも要注意です。

そして、特に要注意な害虫は、コガネムシの幼虫等、根を切る害虫です。
私たちも、ある程度育てたのに、根を切られて瞬く間に枯れてしまうことを、何度も経験しています。
根を切る害虫は、外からは見えないため、特に注意が必要です。

根が切られることで直ぐに枯れてしまう種類や、害虫に根が好まれやすい植物の種類があります。
害虫の駆除には、害虫の殺虫剤を使用する方法や、害虫が育つ時期に植え替えすることで、駆除する方法があります。

参考:準備編

種子の種蒔き前の、種子の保管や用土の準備については以下のページをご覧ください。

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