花木の種まきガイド – 種子の保管方法・事前準備編

一般的な樹木や花木の種まき方法と、発芽促進の方法をご紹介します。
種子は、植物の赤ちゃんですので、慎重に対応する必要があります。
一方で、初めて種まきされる方も、手順さえ踏めば、簡単に発芽させることができる種子は多いので、身構える必要はありません。

植物によっては種子から育てることが望ましい種類や、種子から育てることで、育てた環境に順応して丈夫になることもあります。
何よりも、種子から育てることは、大きな魅力があります。

ここで紹介する方法は、一般家庭で気軽にできる方法を試行したものになり、最も良い方法ではない場合がありますので、あらかじめご了承ください。
1つの方法として参考にしていただければ幸いです。

目次

1.種子の入手

種子の入手先は、最も重要です。
多くのケースでは、新鮮な種子ほど発芽しやすいです。
中には新鮮でないと発芽しない種類がある一方、寒い環境などで一定期間経過させる必要がある種類や、何らかのトリガーを与えないと発芽しない種類もあります。

多くの種類では、新鮮でなくても、適切に保管されている種子であれば、発芽率が維持されます。
そのため、安心できる種子を入手することが重要です。
ショップから購入する場合には、発芽率や種子の発芽方法について事前に確認することが重要です。

※種子も生き物であるため、種子の発芽有無は一粒一粒によって異なります。

2.種子の保管方法

種を蒔くまで、数週間以上の期間がある場合には、種子の発芽能力を温存できるように保管します。
発芽能力を温存するには、「低温」、「低湿度」、「遮光」の環境で保管します。

通常の保管方法としては、冷蔵庫などの5度程度が保てる冷暗室で保管することが考えられます。
保管場所では、種子は乾燥した状態を維持できるように、乾燥剤等を使って、低湿度の環境にすることが望ましいです。

注意点

冷蔵庫で保管する場合、冷凍室で保管するのは厳禁です。
また、凍結しやすいチルドルームや、温度が高めの野菜ルームは避けることが無難です。

なお、種まき時期や環境は、種類によって望ましい温度、事前処理方法が異なりますので、各種類の情報を確認ください。
望ましくない時期や環境で種を蒔くと、発芽するまでに時間がかかり、土の状態が悪くなることや、カビが生える等により、発芽能力が無くなることがあるので注意ください。

3.種まきの容器の準備

一般的には、①種まき容器、②鉢底石または鉢底ネット、③受け皿を用意します。

植え替えることを前提に、小さな容器へ種まきすることがおすすめです。
最初に種まきをする容器は、清潔であり、鉢穴があり、適切に水が排出される容器を選んでください。

通常は、育苗箱や、ポリポット(2~3号ほど)、連結ポットなどを使います。

使い回しの容器を使う場合には、乾燥させてから使用します。
(できれば、熱湯などで消毒して使うことが望ましいです。)

また、種まき容器が深いと、入れる土の量が多くなり、水の乾きが遅くなることで、根腐れを起こすことがありますので注意してください。

種まき容器を収容できる受け皿(1/3~1/2程度の高さ)を用意するのもおすすめです。
腰水で水を供給したり、常に腰水状態にすることで、常に種を乾かさないようにすることができます。
ただし、腰水は過度に水を与えることになるため、ある程度発芽すれば、腰水は止めることが無難です。

4.種まきの用土

種まき用土については、下記が考えられます。
・市販の種まき用土
・赤玉土(小粒)とバーミキュライト 7:3程度の混合土
・赤玉土と腐葉土、バーミキュライトなどの混合土
・赤玉土のみ

市販の種まき用土を利用する場合、やや品質が良くないものがあるため、安価なものを選ばず、用土の販売店にも相談するとよいでしょう。

赤玉土とピートモスを混ぜる方法もあります。
ピートモスは通気性、保水性に優れていてます。
ただし、ピートモスは酸性用土になり、酸性用土が苦手な種類もあるため、過度に混ぜないようにします。
(多くの場合は使用しても問題ありません。)

赤玉土を使用する場合は、土ふるい等を使い、微小な粉は取り除いてください。
微小な粉は水はけを悪くします。
特に、安価な赤玉土は、形が崩れやすく、水はけが悪くなりやすいので、必ず微細な粉は取り除くようにしましょう。
(微小な粉は、微細な種子の覆土等に活用することも出来ます。)

※植物には弱酸性やアルカリ性(中性)を好む植物もあり、酸度の調整を行う場合がありますが、種蒔きの時点では、多くの場合はこだわる必要はありません

普段園芸しない人にとっては多くの土を購入するのは手間になり、大半が余ってしまいますので、デリケートな種子でなければ、赤玉土だけでも良いと思います。

ただし、1年目の成長速度が遅くて植え替えまで時間がかかる場合や、短期間での植え替えを前提にしない方にとっては、長期間、水はけがよい状態を維持できるような用土を選ぶ必要があります。

推奨できませんが、使い回しの土を使い場合には、事前に土の消毒をすることが望ましいです。
市販の土再生剤を利用したり、黒のポリ袋に入れて日光の元で高温消毒したり、熱湯を土へかけて消毒してください。
酸性度が強くなった土には石炭を少々加えるなど、酸性度の調整を行う必要もあります。

肥料は通常、入れないでください。幼い苗は肥料負けして枯れてしまうことがあります。

補足:冷湿環境での保管について

「冷湿環境での保管」とは、温度が低く湿度の高い冷暗環境で種子を保管することで、乾燥して休眠状態にある種子を起こし、発芽率を高める方法になります。
冷湿環境での保管は必要としない種子もありますが、ユーカリや針葉樹などの樹木の種子にとっては効果的です。
低湿環境での保管が必要かどうか不明な場合には、販売元へ確認するとよいでしょう。

冷湿環境に関しては、こちらの記事をご覧ください。

5. 種蒔きから植え替えまでの手順について

種蒔きから植え替えまでの手順は以下のページに参考情報を掲載しております。

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