植物の種子の輸入 -ショップの選び方や注意点

植物の種子を輸入するときのショップの選び方や注意点を紹介します。

当店では、海外ショップから種子を輸入し、植物育成や種子販売していますが、輸入する中で、トラブルや予想外の金額が発生することを経験しました。
信用できないショップもあるので、輸入は少し大変ではあります。

一方で、メジャーではない植物は、流通量が少ないので、「どうしても欲しい植物が見つからないので輸入したい」という方もいらっしゃると思います。

そこで、本ページでは、当店の経験に基づき、個人向けに種子を輸入する際のショップの選び方や注意点について紹介します。

※当サイトでは、輸入の手法・情報に関しての相談は受けておりませんのでご了承ください。

目次

海外の種子ショップの見つけ方

様々な種類の植物を扱う総合ショップは少ないため、欲しい植物の種子を扱うショップを探す必要があります。
例えば、花々の種を主に扱うショップでは、ハーブや野菜の種子観葉植物や多肉植物の種を扱っていることは少ないです。
※様々な種類の植物を扱う総合ショップはありますが、発芽率が悪いケースや輸入に必要な書類を発行していないケースが多いと感じます。

ショップを見つけるときは、Googleなどで「植物の英名」と「SEED」と検索すれば、様々な海外ショップが見つかります。
また、日本語で「植物名」と「種子 輸入」でGoogle検索すれば、個人で輸入されている方のブログからショップ名を確認できることもあります。

海外ネットショップの中には、通常のネットショップと同じ要領で簡単に注文ができるケースもあります。
様々な国のショップがありますが、多くは英語に対応しています。
英語力は無くても注文可能ですが、メールで問い合わせができる程度の英語対応力があることが望ましいです。

注意点としては、「発芽しない種を取り扱うショップ」や「入金後に配送しないショップ」など、様々な業者が存在していることです。
また、優良な業者でも、日本レベルでの問い合わせ対応やサービスは期待できず、種子も発芽するとは限りません。
時間と精神的な余裕をもって注文することが大切です。

ショップ信用度と輸入可否を確認する

ショップの信用度を確認するには、実際に現地に行くことが望ましいものの、通常はできません。
最低限、下記のチェックが必要だと考えます。

①ショップは実際に存在するのか
「Googleマップに店が登録されているか」「住所や問い合わせ先は、ショップの情報と同一かどうか」を確認します。

②植物検疫証明書(phytosanitary certificate)は発行可能か/料金はいくらか
種子の輸入には検疫証明書の添付が必須です。
過去には無くても見逃されることがありましたが、2018年秋頃より必須化されています。
検疫証明書はショップ側で発行してもらう(手続きして入手してもらう)必要があります。

無い場合には配送物は空港の植物検疫所で処分または返送となります。
検疫証明書が無い限り、空港に行っても配送物の受け取りはできません。
たまに、少量であれば、空港で種子と判別されず、素通りすることもあるようですが、それでも配達後には、申告が必要になります。

検疫証明書の発行代は、ショップや国によって異なりますが、通常は数万円以上です。
(国によると思いますが、過去に比べて、値上がりしている気がします。)
ショップによっては、固定ではなく、最低金額が数万円で、合計金額に応じておそらく1割~数割に設定しているケースもあります。
ショップのウェブページ上に記載がない場合には、「検疫証明書の発行に対応しているかどうか」「発行費用はいくらか」を問い合わせします。
検疫証明書の発行に対応していなければ、残念ながら輸入はできません。

③ショップの利用者の声は存在するのか
可能な限り、利用者の評判を調べておくことが望ましいです。
EBAYやAmazonのショップであれば、レビューは簡単に確認できます。
また、日本人の輸入経験が書かれたブログがあれば安心ですが、そのような情報が無いことが多いです。
情報が無い場合には、以下の方法で確認すると、利用者の声が見つかる場合があります。

◇Googleで検索する
Google検索で「ショップ名」と「review」で検索すると、利用者の声を確認できるレビューサイトを見つけられることがあります。
また、レビューサイトから店名で検索することもできます。

【参考:海外のレビューサイト】
・Dave’s Garden:https://davesgarden.com/
植物・園芸関連の情報サイトです。
レビュー投稿ページがあり、様々な利用者の声が非常に詳しく投稿されています。

・Trust Pilot:https://www.trustpilot.com/
・Reseller Rating:https://www.resellerratings.com/
有名な海外のレビューサイトです。
植物・園芸に関わらず、様々なサイトのレビューが掲載されています。

◇Google Mapで検索する
Google Mapに店が登録されている場合、Google Mapのレビューを確認できることがあります。

◇Facebookで検索する
Facebookのページがある海外ショップもありますので、ショップ名やオーナー名で検索すると、最新情報や利用者の声が見つかることがあります。

④ショップへ問い合わせする
初めて利用するショップの場合は、「日本へ配送可能かどうか」「検疫証明書の発行代はいくらか」「配送日数はどのぐらいかかるか」を確認しましょう。
これらの情報がウェブページに記載されている場合にも、事前に問い合わせで確認することがおすすめです。

何回か、問い合わせしても返信が無い/相当の日数がかかる場合には、そのショップは利用しない方が良いでしょう。

問い合わせの回答は日本人のように丁寧ではなく、シンプルで素っ気ない回答の場合もあります。
回答内容が的外れでなければ、大目に見てもよいでしょう。

ショップによっては、無視されることもあります。
ただ、忘れているだけかもしれませんので、再度問い合わせします。

注文しようとしても、「今忙しいので今度」と素っ気ない回答が来て、連絡が来ないこともあります。
このようなショップは、注文できても、適切に発送してくれない可能性があるので、要注意です。

また、検疫証明書は発行していても、国際配送に対応していない場合もありますので、事前確認は重要です。

輸入が禁止されていないことを確認する

苗木の輸入と異なり、多くの植物の種子は輸入することができます。
しかしながら、輸入が禁止されている種類や禁止事項もありますので、確認が必要です。
禁止物によっては事前許可を受けることで輸入できるケースもありますが、個人輸入ではハードルが高いと思います。

禁止されている種子を輸入した場合、日本の検疫所で廃棄されてしまい、支払った金額も戻ってきません。
更に、罰金や処罰を受ける可能性がありますので、十分に確認することが望ましいです。

①輸入が禁止されている種類

種子の輸入が禁止されている植物の種類があります。
対象の植物は、輸入元の国によって異なる場合もあります。

植物防疫所 輸入条件に関するデーターベース
https://www.maff.go.jp/pps/j/search/detail_notice.html

②ワシントン条約で規制されている種類

ワシントン条約で輸入が禁止されている植物の種類があります。
ワシントン条約で規制されている種類でも、種子は輸入できる場合もあります。


http://www.customs.go.jp/mizugiwa/washington/washington.htm
https://www.meti.go.jp/policy/external_economy/trade_control/02_exandim/06_washington/cites_about.html

③栽培が禁止されている植物

日本での栽培が禁止されている植物の種類があります。

特定外来生物等一覧
https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/list.html

大麻取締法、あへん法等により禁止されている植物
https://www.town.haboro.lg.jp/news/catetemp2_news/taima-keshi.html

④栽培に注意が必要な植物

「特定外来生物」に分類されていなくても、注意が必要な植物の種類があります。
地域によっても若干異なりますが、注意が必要です。


https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/iaslist.html

植物検疫所の輸入時の注意点についても事前に確認が必要です。

植物防疫所 Q&A

http://www.maff.go.jp/pps/j/business/import/faq/index.html#Q105

JETRO 貿易相談Q&A

https://www.jetro.go.jp/world/qa/04M-010764.html

海外ショップからの購入時の注意点

私たちの経験から、他の注意点をいくつか紹介します。

解消できるリスクは事前に解消し、残るリスクを考慮して注文することが大切です。

種子が発芽しない

発芽しないことや、発芽率がとても悪い場合は、よくあることです。
前回注文したときは良かったのに、次は発芽しないことも。

海外ショップ側の管理や仕入れ状況に加えて、輸入は配送期間も長くなるので、配送中の温度変化なども影響するのかもしれません。
海外ショップ側も、別の国・地域から仕入れて売っているケースも多いです。

可能であれば、購入前にショップへ発芽率・発芽環境を確認することが望ましいですが、少量注文ではショップ側も回答が遅くなったり(無かったり)、中間業者の場合は把握していない場合もあります。

※一部種類によっては種子取得日は重要ですが、適切に保管されていれば、よほど古くない限り、発芽率は良好に維持されている種類も多いので、発芽率と発芽確認年が重要と考えます。

一方、発芽率が確認できるケースがありますが、当店の知る限りは、当てにならないことがよくあります。
50%以上なのに5%のときや皆無のときも。
どのような環境で確認したかは不明瞭なので、文句も言いづらいことがあります。

初めて注文する海外ショップでは、半分以上の種類は発芽しないケースを覚悟したほうが良いでしょう。

発芽方法が不明・正しくない

通常、発芽方法は掲載されていないことが多いので、可能であれば、問い合わせることが考えられます。

ときどき発芽方法が掲載されているケースもあります。
ただし、特に海外ショップでは、これは違うだろうというものや、その通りにしても発芽しないことも、そこそこあるので、参考の一つと考えることが望ましいです。

また、この方法は「実質不可能では?」ということもあります。
こういうものは、本当に確認したのか疑問です。
難解そうな種類は、注文しないことも一つです。

そもそも種子が入っていない

時々あるのですが、果実のようなものだけや、もみ殻だけで、種子が入っていないことがあります。
前回注文時は、種子も入っていたのに、入っていないこともありました。

種子らしきものでも、その状態から「これは発芽しないだろう」と明らかなものもあります。

種類が全く違う

海外のショップレビューを見ていると、種類が全く違うという声もよく見かけます。
異なる種類が送られてきたら、注文した意味がありません。

そのような怪しいショップを回避していれば、種類が違うことは滅多にありませんが、ショップ側のミスで誤っていることもあります。
届いたときには、種子の見た目のチェックを行い、怪しいときは、写真を撮影して確認します。
明らかに違うことが確認できた場合は、返金を要求しましょう。

重量購入のとき、目安の種子数が明らかに少ない

1ozや1g等、重量単位で購入するショップでは、目安の種子数が掲載されていることがあります。
ただし、この種子数が結構、当てになりません。

それは、もみ殻などの種子以外のものも、その重量に含まれるケースがあるからです。
もみ殻がなくても、種子は1つずつサイズが違います。
また、成長不足の木の種子は、種子サイズが小さくなることもあります。

そのため、1g等の少量になると、種子数は差異が生じやすくなります。

ショップ側も、仕入れロットに応じた種子数を更新していないことや、適当な種子数を掲載していることがあります。
そのため、同ショップや別ショップで過去に注文した重量情報を参考にしても、もみ殻の比率や種子サイズが違うことがあるので、種子数は全然違うこともあります。

中には、目安よりも多く入っていることはあります。
一方、目安よりも少ないことも少なくありません。

高価な種子を購入したとき、目安の種子数では数千粒以上のはずが、明らかに数百粒以下ということもありました。
十分の一以下です。
ショップへ「記載の種子数と違う」と文句を言っても、ショップ側は「もみ殻らしきものも種子だ」と主張され、話が進まないこともありました。
このようなケースでは、種子から発芽した様子を写真に撮って、返金を求めるのも一つかもしれません。

注文した種類が入っていない

注文した種類が一部入っていないことがあります。
単純に、ショップ側の凡ミスの可能性が高いです。
ショップ側に連絡して返金を求める必要があります。

発送されない

海外のショップレビューを見ていると、いつまで経っても「発送されない」という声もよく見かけます。
ショップレビューを事前に確認し、このような怪しいショップは利用しないことが大切です。

正しい宛先に発送されない

配送先ではなく請求元へ配送されたことがありました。
配送先と請求元の住所が異なる場合、ショップによっては、請求元の住所へ誤って配送する場合があります。

また、前回注文時の住所から、別住所に変更した場合、前回住所に配送されそうになったこともありました。

できるだけシンプルな注文にし、複雑なことは要求しないことがトラブルを防ぐ一番の方法です。

検疫証明書を付けずに配送されて受け取れない

検疫証明書の金額を支払っているにもかかわらず、検疫証明書を付けずに配送したショップがありました。
植物の種は日本到着時に、植物検疫所で開封されてチェックされますので、検疫証明書や明細書の一覧と一致していないと、受け取ることはできません。
ショップによっては検疫証明書の重要性を理解していない場合があり、ショップ側に非があっても返金に応じない可能性も十分に考えられますので、「検疫証明書が必要であること」をしっかりと伝えることが重要です。

検疫証明書に、一部種類の記載が無くて一部種類を受け取れない

検疫証明書の中に、一部種類の記載漏れのことがあります。
基本的には、その種類を受け取ることができません。

単純に、ショップ側の凡ミスの可能性が高いです。
ショップ側に連絡して返金を求める必要があります。

可能であれば、発送前に、証明書のコピーデータを受け取り、チェックすることが望ましいです。

送料などの他の料金が想定以上に発生する場合がある

注文金額が想定以上に高額になる場合があります。
送料や手数料などについて、事前にショップへ確認することが望ましいです。

検疫証明書と、送料は、結構な金額がすることがあります。

また、あるショップでは、実際注文してみると、送料や証明書に加えて、為替手数料なども発生するようで、合計で商品金額の150%になることもありました。
注文する国によっては、様々なお国事情で、仕方がないこともあります。

日本での受取時には、日本側で、関税などの税金も発生します。
加えて、一定金額以上では、空港等で、通関手続きが必要になることもあります。
(郵便局等に委託できますが、委託手数料がそこそこ生じます。)

クレジットカードの不正請求(番号流出)に気を付ける

クレジットカード支払いは、クレジットカード番号流出の不安があり、信用できるショップでも「不正使用された可能性がある」というネット上の声も見かけます。

海外ショップ利用全般に関係することですが、支払い方法として、クレジットカード支払いの他に、他の手段を選べるときは、それを選択することが無難です。

例えば、クレジットカード決済でもPaypal支払いが利用できるならば、利用することが望ましいですが、Paypal支払いに対応していないショップも少なくありません。

クレジットカード支払いが必要な場合は、以下の対策が考えられます。
・クレジットカードの支払金額の上限を下げる
・プリペイドカードを使用する
・一時的なカード番号が発行できるクレジットカードを利用する
・支払い後には支払金額が直ぐに通知されるサービスがあるクレジットカードを利用する

為替レートに注意する

まれにショップによっては、支払い時の通貨を選べることがあります。
ただし、選んだ通貨によっては割高になることがあるので、ショップへ事前に確認しましょう。

また、海外ショッピング全般に関係することですが、ショップからの請求書を受けた後、クレジットカードで支払う場合、使用するクレジットカードの種類によって割高になる場合があります。

クレジットカードには、VisaやMastercard、JCB等のブランドがあり、為替レートが異なります。
事前に為替レートを確認して、支払時のクレジットカードを選択することがおすすめです。

まとめ

輸入には様々な注意点がありますので、輸入する場合には、適切な手順を踏んで適切に輸入することが大切です。

なお、種子に関わらず、輸入物には「荷物はパッキングされていること」、「適切なラベルが貼り付けられていること」、「料金が分かる納品書や請求明細書(Invoice)などが同封されていること」などの基本的な要件も必要になります。

また、輸入品の価格によって関税も発生しますので、荷物の受け取り時には支払いが必要です。

輸入には様々なリスクがありますので、リスクを把握した上で、それらを可能な限り解消してから、輸入することが望ましいです。

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